旅行先を検討する時はウェブだけでなく、一応、ガイドブックも参考にする。
とはいえ、お金を払って買うことはすっかり少なくなってしまった。
たいていの場合、本屋さんで立ち読みするか、図書館で借りて読む。
今の時代、ネットの方が最新の情報になっているし、実際の旅行者の生の声に触れることができて、有益だ。
しかし、旅行記などの本を読むのは好きだ。
他人の経験から、自分の旅行をどのようにするべきか考えることができるし、単純に読む楽しさがある。
感銘を受けた本をいくつか紹介してみたい。
「旅の極意、人生の極意」大前 研一著(講談社)
大前氏がオススメする15箇所の旅行先が紹介されている。いわゆるガイドブックだ。
場所はハワイ、オーストラリア、プーケット、コートダジュールと全世界に及ぶ。
場所からわかるように、いずれも富裕層のリゾート地ばかり。
いずれも有名で人気のリゾートだが、ありきたりな観光スポットを紹介しているわけではなく、その土地土地の素晴らしさに注目している点が特徴だ。
発行年が2006年のため、情報としては古い。
特にホテルの評価は、現在では異論があるのではないかと思う(逆に言えば、ホテルの栄枯盛衰を感じることができる)。
そのような内容で、特に感銘を受けたのは、大前氏の旅に対する姿勢だ。
タイトルが示す通り、旅行に向き合う姿勢は氏の人生に対する姿勢となっている。
大前氏は学生時代、手っ取り早く稼ぐために、当時、高給だった外国人観光客を案内するガイドになろうと、英語の勉強に必死になって取り組む。
ガイドになった後も観光案内を充実したものにするために、自作の説明パネルまで作成するようになる。目的はチップ目当てだが、徹底して努力をする姿勢には感心させられた。

「自己革新」や「自己実現」といった優秀なビジネスマンに欠かせない思考が、ガイドの仕事で培われて、やがて、それはコンサルタントの仕事や旅行に対する考えしいては生き方のベースになっていく。
氏は、その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに就職しパートナー(役員)にまで出世する。
仕事だけでなく旅行にも全力で、この本で紹介するような場所に旅行し、仕事に取り組むのと同じ熱量を持って、旅行に向き合う。仕事と遊びの両面に全力を尽くすことで、人生に対して真摯に向き合う。
本の中で彼は一年間のスケジュールは先に決めて、どの時期にどこへ旅行へ行くかを前もって決めていると書いている。
もし講演の依頼があっても、旅行の時期であれば迷わず断る。
これは日々の生活に追われているサラリーマンにはできないことだが、仕事を優先するのではなく、自分の人生を何にもまして尊重している姿勢は学ぶところが多いだろう(普通の日本人コンサルトであれば、世間体を気にして、そんなことを言わない)。既に成功者であるということもあるが、自分の人生に対して深く考え、実行しているからだからこそだと思う。
私たちは、日常に追われていると、どうしても長期的で俯瞰的な視点を見失ってしまう。
会社中心になって、自分を後回しにする。自分はどのように生きていきたいのかを考えなくなる。ビジネスパーソンである大前氏が、自分の人生を常に最上位に位置付けていることに感銘を受けた。
