海外のビーチリゾートでタクシーに乗ると、ホテルへ向かう道すがら、色々と観光場所を教えてくれる運転手がいる。
「あそこが○○だ」と指差しながら、観光地の説明をしてくれる。
親切でありがたいことだが、参考程度に聞いておくだけで、そのあとに観光に行ったことはほとんどない。
帰国のために空港に向かうタクシーでも「どこに行ったのか?」と聞かれることが多い。
いつも、「どの国から来たのか」と聞かれたあとなので、日本人は観光に行くのものだと思っているのかもしれない。
日本人は海外に来ると必ず名所などの観光スポットに行くが、ビーチリゾートに来ている欧米人は違う。
ホテルでのんびり過ごす人が多い。
日本人のように活発にショッピングやアクティビティをする人は少ない。
日がな一日、太陽の方角に体を向けて日焼けしながら、昼寝をしたり、本を読んだりして、過ごしている。
昼食もプールサイドで取る。ホテルの外に出るのは、せいぜい夕方から。暗くなってからようやくレストランに出かけたり、スポーツバーに出かけたりしている。

プーケットに行った時にヴィラタイプのホテルに泊まった時もそうだった。
プーケットには手頃なホテルがたくさんあって、ヴィラタイプでも手が届く価格のホテルもある。プールアクセスができる部屋に泊まっていた欧米人は、朝から晩までプールの前のチェアにずっといて、本を読んだりビールを飲だりしていた。おそらく私なんかより、ずっと長い期間泊まっていたのだろう。
日本人でこのような過ごし方をしている人はかなり少ない。
プールにいるのは、長くて一時間くらいで、すぐにいそいそと、どこかへ出かけて行く。
これは韓国人も同じようだ。
韓国人は日焼けを好まないので、必ずシャツをきて(黒いスイムスーツっぽいものが多い)、帽子をかぶっているので、すぐわかる。ビーチやプールで過ごすのはほんのちょっとの時間だ。
だから、昼間はプールには、ほぼ欧米人しかいない。
日本人と欧米人ではビーチリゾートに対する考え方が違うのだろう。
日本人は「せっかく海外に来たのだから」と何かをしたくなってしまうようだ。
私は欧米人と同じように、ビーチリゾートに来た以上、景色を眺めながら、ゆっくりとした時間を楽しみたい。普段は仕事で貧乏暇なしだからだ。
ホテルの外に出るのは、食事の時だけ。それ以外はできるだけビーチベッドで過ごしたい。
普段の日常でぼんやりしたり、物思いに耽ったりすることはないので、仕事が忙しくなると、ビーチリゾートに行きたくなる。
体が休息を求める。瞑想的な効果もあるかもしれない。

私の場合、リゾートの滞在は数日あれば充分だ。
3日間も何もせず、怠惰な生活を過ごせば、頭をリフレッシュすることができ、また仕事に戻る気持ちが湧いてくる。そのぐらいがちょうどいい。
これを繰り返しているうちに、日本ではリラックスできないようになってしまった。
何事にも新鮮味を感じなくなってしまって、日本では精神を完全に開放できなくなってしまった。
南国の景色、強い太陽、むわっとした熱気、太陽が照り返すプール、こういった環境でしか、時間を忘れることができなくなってしまった。
「仕事を辞めて、ゆっくりできるようになれば」と思うこともあるが、仕事がなくなってしまい、やることがなくなってしまうと逆に苦しいだろう。
もしかしたら、仕事と休息のバランスを繰り返しているときが一番幸せな時なのかもしれない。