海外に行った時の最初の難関は、空港からホテルまでどうやって移動するかだ。
バンコクやシンガポールであれば、それほど困る必要はない。
空港で電車(MRT)に乗ればいい。迷うことなく安全に行くことができる。値段も安い。
問題は、空港からの電車が整備されていない場合だ。
必然的にタクシーやバスを使うことになる。
タクシーはぼったくられる危険性があるし、バスは旅行者には難易度が高い(エアポートバスを除く)。
海外でのトラブルで、最も多いのはタクシーだろう。
ネット上でも「被害にあった」という報告がされている。
例えば、ベトナム。
ネットで調べると、ビナサンやマイリンタクシーといった会社であれば、比較的、安心だと言われている。
私も利用したことがあるが、確かにぼったくられたことはない。
噂では、それ以外の個人タクシー等はメータを倒さず、言い値でふっかけてくることが多いらしい。
ベトナム駐在経験のある友人は、メータを倒さない場合、運転手の席を後ろから蹴る(!)と言っていた。現地の流儀に慣れると、それも普通になるのだろうか。
最近は、Grabなどの配車アプリが登場したので、そういう心配は少なくなった。
依頼時に値段がわかるので、安心して乗ることができる。クレジットカードを登録しておけば、現金のやり取りもいらない。
以前は、アジア各地にUberもあったようだが、その後、撤退したようで今はGrabを使っている。ベトナム、マレーシア、タイ、インドネシアの多くの地域で使える。マレーシア等では通常のタクシーも安いが、Grabならさらにお得に移動することができる。ホテルや観光名所の近くには、たいてい客待ちしているGrabがいるので、待つこともない。

地域によっては、タクシーの料金がその国の物価に比べて、異様に高い場合がある。
例えば、プーケットやサムイがそうだ。
プーケットの場合、空港からパトンビーチなどの繁華街まではかなり距離がある。ほとんどの旅行者が空港でタクシーチケットを購入することになるが、パトンビーチまで800バーツ(2020年現在2,600円ぐらい)かかる。メータータクシーと違って、定額なので安心は安心だが現地の物価から言えば高い。観光客が多いため、価格交渉も不可能だ。
私も、初めてプーケットに行った時は空港カウンターでチケットを購入したが、その時の運転手は、乗車中ずっと、携帯で電話したり、メールのやり取りをしていた。行き先のホテルも間違えたくらいで、チンピラ感が半端なかった。お世辞にも優れた運転手ではなかった。
それに懲りて、2回目に行く時は事前に他の手段を調べた。
その結果、ミニバスや路線バスもあるということがわかった。
ミニバスは180バーツ(600円位)だが、乗り合いのため、いつ発車するかわからず、加えて、途中でツアー等の勧誘を受けるということだったので、あまり気が乗らなかった。
一方、路線バスはSmartBusというバスがあった。
こちらは数年前に運行を開始したバスのようで、エアポートバスとは違い、路線バスに近い。こまめに停留所に止まる。
パトンビーチまで150バーツ(500円位)で値段は安い。
変な勧誘もなく、時刻表に沿って運行しているので、おおよその予定を立てることもできる。
バスの中にはwifiや電源コンセントが完備されていて、冷房も効いている。
主要な場所に停留所があるので、ジャンクセイロン等のランドマークの近くにあるホテルに行くには困らない(ミニバスと違って、ホテルまでは送ってくれない。基本は停留所だけに停止する)。
SmartBusの名称の通り、ネットで現在のバスの位置がわかるので、空港へ向かう往路の時にも使える。
SmartBusは、旅行者だけでなく、地元民もけっこう使っていた。
「停留所ではない、民家の家の前に止まった」と思ったら、その家から人がさっと出てきて、そのまま乗ってきたことがあった。空港方面へ向かうバスはこれしかないため、毎日、通勤で使っているようだった。
欠点は、一時間に一本しか走っていないこと。
時間によっては長く待つことになる。
いろいろと制約があるが、移動時間はタクシーとほとんど変わらないので、フライトの到着時間にタイミングよく合えば、けっこう便利だと思う。私の場合、エアアジアの到着便とちょうど合うので、いつもこれを使っている。
以前はマイナーな存在のため乗客は少なかったが、最近は利用者が増えてきた。指定のカードを事前購入して使う(suicaのような方式)ことしかできなかったが、最近は現金払いでも対応しているようだ。

プーケット同様、サムイも交通の便が悪い。
サムイはタクシーも走っているが、こちらはさらに高い。
空港からほど近いチャウエンビーチに行くだけでも、400バーツ(1,300円位)もする。東京のタクシー以上だと思っていい。
空港から移動する場合は、タクシー以外にはミニバスしか選択肢はない。
ミニバスの場合、人数が6人程度集まったら、出発することになるので、集まるまでに結構時間がかかる。
サムイの場合は、カロンビーチやボープッドビーチ等の違う方向に行くつかのビーチがあるので、同じ方面に行く人が集まるまで待たなければいけない(ミニバスの台数が少ないこともあるだろう)。ホテルに迎えを頼むよりも安いので、だいたいミニバス移動が多い。値段は150バーツぐらいからで、場所によって違う。
グアムの場合は、さらに極端で、タクシーはほぼない。
個人手配の旅行の場合、事前に運送会社に依頼しておくか、ホテルに送迎を頼むしかない。
グアムの場合もタモンビーチまでは距離がほとんどないのに、値段がけっこうする。
離島なので仕方がない面もあるが、観光地価格と言えるだろう。グアムらしいと言えば、グアムらしい。

このようにまだまだ便が悪い場所があるが、事前に予約できたり、Grabで依頼できたり、昔に比べれば格段に便利になったと思う。バックパッカーのバイブル「深夜特急」の時代とは大きく変わっている。
「深夜特急」では、交通手段の情報がない時代だから、交通手段を聞いてまわるしかなく、その様子が克明に記述されている。交渉の様子がリアルに詳細に書かれているが、言葉の壁がある中で、あのような交渉をするのはけっこう大変なことだと思う。
「深夜特急」を読むと、今との物価の違いに驚くが、毎年同じ場所に行っていると、その変化にも気づくことができる。
2019年、プーケットのタクシーは一年前よりも100バーツも値上げされた。一部の業者だけ上がるのではなく、ほぼ全てのタクシーが一斉に上げたようだ。
これはベトナムでも同様だった。特にダナンでそれを強く感じる。ホテルの宿泊料金もホテルによってはかなり上昇している。
ダナンが「今行くべき旅行先」として大きく注目されているのもそういうことなのだろう。
ダナンの物価上昇は目覚ましく、今後アジア全体が豊かになって行くにつれて、今のようなお得感はだんだんと薄れて行くのかもしれない。