飛行機には、本当にいろんな人が乗っている。
ひたすら寝る人。狭い座席でずっとパソコンで仕事をする人。
CAさんが通るたびに、ビールを頼む人。興奮して、ずっと喋っている子ども。
興奮したのか、離陸するまで、隣に座っている友人と一緒に歌を歌っている欧米人を見かけたこともある。
搭乗中は時間を持て余すので、しばしば周りの人の様子を伺ってしまう。
機内エンターテイメントで映画を見ている人がいると、ついつい、どんな映画を見ているかを見てしまう。悪い癖だ。

大前研一は、著作の中で、「飛行機に乗った時、必ず隣の席の人に話しかけるようにしている」と書いていた。
普段は決して巡り会うことができない人と知り合うことができるからだそうだ。
ビジネスクラスに乗っている人なら、お互いがそういった社交性を身につけているのだろうけれど、エコノミークラスでは、あまりそういうやりとりをしている場面を見かけることはない。
大学生ぐらいの若いバックパッカー風な旅行者が意気投合して、旅先の情報交換をしている場面を見かけたことがあるが、それは珍しいケースだ。
プーケットからクアラルンプールに向かっている時、話しかけてきたおばさんがいた。
60代くらいの細身の欧米人で、これからサムイに行くといっていたが、フライト中、ずっとヨガ的な柔軟体操をしていた。
彼女は窓側で私は通路側にいて、真ん中の席は空いていたので、窓側に背中を向け、足を伸ばしながら運動していた。
運動しながら、いろいろと親切に話しかけてきたのでかなり戸惑った。
「どこの国の人かもわからないアジア人によく話しかけるな」と不思議に思った。
こういうケースは珍しい。
言葉の問題もあるので、たいてい、みんなが周りに迷惑にならないように黙って座っている。
話しかけられたと言えば、こんなこともあった。
クアラルンプールからバリ島に向かっていた時、隣に巨体のインド系の男性が横に座った。
席に着いた時から、様子が落ち着かない。
どうやら、初めて飛行機の乗ったらしく、離陸が怖いようだ。
前方のシートの上部をがっちりと掴んでいる。終始落ち着きなく、自らを落ち着かせるように、横に座っている友人とずっと喋っていた。
しばらくした後、入国書類を書くためのボールベンを持っていないようだったので、貸してあげたら、話しかけてきた。
「このフライトは初めて?」
「初めてじゃないよ。昨年も乗ったよ」
その答えを聞いて少しは安心したようだったが、それでも、前のシートをがっちりとつかんでいた。

不思議な格好の人を見かけたこともある。
それはTシャツと短パンだけで搭乗してきた日本人だった。
日本からバリ島へのフライトの時だ。
乗ったことがある人はわかるように、フライト中の飛行機の中はとても寒い。
特に、エアアジアはその寒さで有名だ。ほとんどの人は上着を羽織ったり、タオルケットをかけたりしている。
「エアアジアに乗るときは、防寒着を持って行くように」というアドバイスをネット上でよく見かける。
その人は50代ぐらいの日本人のおじさんで、寒さに全く動じることなく、薄着のままで英語の勉強をしていた。離陸時から到着時まで一睡もすることなく、必死に英単語をノートに書きつけていた。
たまに言葉に出して、発音の練習もする。
格好からして、ビジネスマンではない(そもそもビジネスマンは、あまりエアアジアに乗らない)。
隣にいた女性も不思議に思ったようで、話しかけて、旅行の目的などを聞いていた。
私もとても興味を持ったので、どんな人か知りたかったが、私の席からは会話の内容が聞き取れず、とても残念だった。
空港でカウンターが開くのを待っている間、パラダイス山元氏の飛行機の本を読んでいたら、マイル修行僧だと思ったらしく、丁寧に色々と教えてくれた日本人もいた。
場所はホーチミン空港。
その女性はANAとJALの両方で上級会員を獲得していて、どのようにすれば、効率的にマイルを貯めることができるかを親切に教えてくれた。
説明によると、JALの場合、事前にどこかの特別会員(詳しくは忘れた)になっておいて、その後、JALのサイトから、ホテルも合わせたパッケージで旅行すると、マイルが効率的にたまるということだった。海外版のJALパックみたいなものだったと思う。その方法でジャカルタを往復するのが最も効率的だと勧められた。
懇切丁寧に教えてもらったのだけれど、結局、その方法は実践していない。