パタヤで暮らす

定年を迎え、仕事をする必要がなくなったら、どのように暮らせばいいのだろうか。
働かなくても生活できるなら、それは幸せなことだ。

しかし、私のような貧乏暇無しの時間に追われるような暮らしを散々してきた人間が、突然、膨大な時間を与えられたら、逆に、途方に暮れてしまうのではないだろうか。
老後をどのように生きるか。
あらかじめ将来の明確なビジョンを持って生きている、そんな余裕がある人は少ないだろう。

タイのパタヤに行く途中で、世界中を旅行しながら、余生を楽しんでいる日本人男性に出会った。
バンコクからパタヤに行くのはバスを使うと安い。そのバスの中で、たまたま席が隣になったのだ。
その男性は40〜50歳くらいに見えた。リタイヤとしては若い。
早めに仕事をリタイヤした後、世界のあちこちを旅行しているとのこと。
これから1ヶ月パタヤで過ごすとのことだった。

独身で、子供もいないので気楽に生活しているらしい。
パタヤで長期滞在のアパートメントを借りると、諸々含めて、月10万円位で生活できるとのことだった。
確かにパタヤであれば、それくらいの費用で生活できるだろう。
食事は地元の店やフードコートに行けば100B(2020年現在350円くらい)で食べることができる。

老後は海外に定住して生活する人も多いが、この人のように一ヶ月ぐらいの短期間だけ海外で暮らすのも良い方法だな、とその時に思った。
タイやマレーシアならば、短期間であれば、ビザなしで滞在できる。
飛行機代もLCCを使えば、かなり安いから、頻繁な移動もしやすい。
生活の基盤は日本においたままなので、病気や年金の受給の心配もない。
1ヶ月ならば、飽きてもすぐに日本に帰れる。
生活の拠点を移すよりも、リスクが少なくて良いと思う。

パタヤは日本人に限らず、世界中のリタイヤ生活者にとって人気のようだ。
現地では、長期滞在と思われる白人男性を地元のレストランでよく見かけた。
「ファラン」と呼ばれているらしい。
慣れた様子で朝食を注文し、くつろいでいる様子を見ると、毎日その店に来ていることが伺えた。
そのような客が多いのか、低価格でコンチネンタル・ブレックファストを提供している店がパタヤにはたくさんある。

ゴーゴーバーで知り合ったと思われる女の子と食事をしている場面もよく見かけた。
パタヤはそういった部分でも、さみしい男性のニーズに応えている。
私は、滞在の最後の日に奮発して、AVANI PATTAYA RESORTに泊まったが、不倫カップル(?)みたいなファランとタイ人女性のカップルがプールにたくさんいた。
モデルみたいなキレイなタイの女性とプールでお酒を飲んでいた。
おそらく、バンコクあたりから旅行に来ているのだろう。

ネットのパタヤ旅行の感想記事で「もう二度と行きたくない」というコメントを見たことがあるが、それはおそらく家族連れの旅行だったのだろう。その感想は今なら非常に理解できる。
パタヤは小さな子供がいる家族が来るところではない。
独身男性が行く場所だ。